高瀬総合法律事務所

#21
2024,5,28

  
読んでいるだけでちょっと面白い法律

お米のこと

そろそろ田植えの季節ですね。

自宅のベランダ一面を水田に改造してセルフ米作りをしたいと夢見ているのですが、技術と経験と根気が乏しい筆者が挑戦しても、稲ではなくボウフラが育つだけの結果に終わりそうです。そして賃貸借契約的にも多分アウトな気がします。

日本の食を支えるプロフェッショナルに敬意を表しつつ、今回はお米にまつわる法律のお話です。

日本で恐らく最古の田んぼに関する法律は、「班田収授法」。

戸籍を作り、それをもとに6歳以上の男女に田んぼを支給するシステムを定めたものです。(死亡すれば国に返納するため、もらえるわけではありません。)

筆者のような平民女子の場合、支給される田んぼは480坪。25mプールで換算すると5個分弱です。

一見、国からの豪華な成長祝いかと思うところですが、古代の日本はそんなに甘くありません。

この時代、税はお金ではなくお米や地方の産物、労役などで納められていたので、田んぼの貸し出しももちろん徴税のためです。

税率は、支給された面積の田んぼから獲れるであろうお米の約3%。これも一見、現代日本の所得税率からすると優しそうに思えます。

しかし、上記の平民女子の場合、この3%というのは、籾殻つきのお米で約54リットル(玄米では約27リットル)を納めなければならない計算です。しかも、遠くの役所まで人力で運んで納めるのです。

ちょっと想像してみてください。幼女が突然プール5個分の田んぼを与えられ、「今年の秋までに牛乳パック54本分の籾米を納税しろ」と命じられるというクレイジーな状況を。

納められなかった場合、延滞税などという生易しいペナルティでは済まなかったでしょうから、稲が枯れると命も枯れるおそれがあります。

この他にも、国から強制的に稲を貸し付けられ、それを育てて1年後に5割の利息つきで返さないといけないという税もあったようです。利息制限法のありがたみが分かりますね。

翻って現代の日本では、地元の名産品を積極的に消費しようという観点から、各地の自治体でお米に関する条例が制定されていたりします。

例えば、「南魚沼市コシヒカリの普及促進に関する条例」。「市民は、・・・特に朝食ではコシヒカリ又はその加工品を用いるよう努めるものとする。」(第4条第2項)という攻めた条文が素敵です。

「私、あきたこまち派なんです」などと言おうものなら住民票が抹消されそうな勢いです。

他にも、「みなべ町紀州南高梅使用のおにぎり及び梅干しの普及に関する条例」なんてものもあるのですが、この条例の前文には「紀州南高梅を使用したおにぎり(以下「梅干しでおにぎり」という。)を奨励し」というパワーワードが現れます。

この町ではツナマヨ派は肩身が狭くなりそうです。

今日も全国の皆様が美味しくごはんを食べられるよう願っております。

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会社経営と株式
株式について最低限押さえて欲しいポイント
~株式と回収~

今回は株式譲渡の承認がされない場合に、どのように出資金を回収できるようになっているかについてお話しします。

株式譲渡の承認がなされなかった場合、株式譲渡をして出資した分を回収したい株主は打つ手がなく万事休すとなってしまうのでしょうか。実はそうなっていません。

会社法では、「譲渡を承認しないのであれば、適当な人に買い取らせろ」と請求できるようになっています。つまり、株式譲渡を制限した趣旨は「会社にとって都合の悪い人を排除する」ということにあります。したがって、論理的に言えば、会社から見て「都合の良い人」であれば譲渡は認められるべきということになります。そして、会社にとって「都合の良い人」は会社が決めるしかありません。そこで、譲渡承認請求と併せて、「買取先指定請求」をすることができるようになっています。

そして、会社は、会社自ら、または会社が指定する人(指定買取人といいます)が株式を買い取る、旨を通知します。この通知がなされると、株式を譲渡する契約が締結されたものとされます。つまり、株主と会社、もしくは、株主と指定買取人との間で株式の売買契約のような交渉をすることになりますが、ここで重要なのは、「いくらで買ってもらえるか」です。会社からすれば「いくらで買い取れるか」であり、株主からすれば「より高く」、会社からすれば「より安く」株式を売買できることを望むため、株式の売買価格の交渉が難航することがあります。その場合は、裁判所に買取価格を決定してもらえる手続きが定められています。そして、必ず買取価格は決定されますので、ここまできて、株主は晴れて出資金(もしくは株価相当分)のお金を手に入れることができるのです。ただし、この裁判所での決定手続きにも20日という厳格な期間制限があるので非常に注意を要します。

以上みてきたように、たとえ株式譲渡制限がついていても、株主は最終的には株式を手放して一定のお金を手に入れることができます。ただし、実務的には、会社に拒否されるかどうかにかかわらず、株式を譲り受けてくれる人を探すのが一番大変だったりします。法律通りにはいかない現実があります。いわゆる上場やイグジット(M&A)がない限りなかなか株式からお金を回収することは難しいのであり、出資をするということは会社と一蓮托生だと考えた方が良いかもしれません。


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