高瀬総合法律事務所

#24
2024,8,28

  
読んでいるだけでちょっと面白い法律

ヒモを制した者たち

酷暑も終わりを迎えつつある今日この頃、皆様夏バテはなさっていませんでしょうか。
今回は、どこに需要があるのか分からない法曹界の小ネタをお届けします。

司法試験合格後に最初に学んだことは、出頭すべき役所を間違えてはならないということでした。
十数年前、本当に合格しているのかいまいち信用できず、ハムスターのごとくプルプル震えながら合格証書を受け取りに法務省を訪れた筆者は、入口で警備員さんに捕獲されました。やはり手違いだったか!?と怯えつつ用件を話すと、警備員さんは「ここは検察庁。法務省は隣。」と生暖かい笑顔で教えてくれました。
こいつ大丈夫か?という心の声が漏れ聞こえた気もしますが、全く無関係の農林水産省あたりに行かなかっただけマシだと思ってほしいものです。この貴重な教訓は、今も「神奈川簡易裁判所と横浜簡易裁判所を間違えてはならない」といった形で活かされています。

司法試験に合格しても、法曹資格を得るためには更に1年間「司法修習」という研修を受ける必要があります。修習では、全国各地のどこかへの配属がほぼクジ運で厳正な選考によって決まり、当地の裁判所・検察庁・法律事務所にお邪魔して研修をさせてもらうことになります。司法試験のプレッシャーから解放され、見知らぬ土地に住んで一から友達を作り共に修行するというのは非常に楽しい経験であり、なんならもう1回やってもいいくらいです。
…と書いていて、筆者はふと気付きました。もしかして、実は2回目も行けるんじゃないか?と。
最高裁判所の公表している「司法修習生採用選考審査基準」を読む限り、修習生の採用条件は「司法試験に合格した者」というシンプルなものであり、若干の不採用事由(心身の故障、一定以上の前科など)に該当しない限りは原則として採用されることになっています。そして、不採用事由の中に「既に弁護士登録をしている者」といった内容は含まれていません。
これは制度の穴ではないか…?と一瞬思いましたが、よく読むと、不採用事由の中には「品位を辱める行状により、司法修習生たるに適しない者」という項目がありました。愉快犯的な修習リピーター行為が「品位を辱める行状」に当たらないか、と言われると自信はありませんので、過ぎた時は戻らないと自分に言い聞かせ、勉学に励む若者の邪魔をせず真面目に働こうと思います。

さて、修習が終わった後には、最後の卒業試験(通称「二回試験」)に合格する必要があります。
試験時間が7時間半×5日間であるあたり、法曹に一番大切なのは強靭な肉体であるというメッセージを強く感じますが、実は、それを上回る必須の素養として要求されているのが「ヒモを結ぶ」能力です。
答案用紙の束を順番どおりに揃え、穴2個の位置を合わせて漏れなくヒモを通し、突風が吹こうが象に踏まれようが絶対にバラけないように渾身の力を込めて結ぶ、という作業を試験時間内に終えられなかった場合、一発不合格となって再試験は1年後です。緊張しやすい人やうっかりさんを露骨に狙い撃ちする鬼畜ルールといえましょう。
皆様の周りにいる法曹関係者は、人生最大級の緊張感をもってヒモと戦いヒモに勝利した人々であるという事実を、こころの片隅に置いていただければ幸いです。

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会社経営と株式
株式について最低限押さえて欲しいポイント
~株主総会の運営③ ~

前回は中小企業において、株主総会の招集手続きをいかに省略するかを重点的に話しましたが、今回は、そもそも、株主総会決議自体を省略する方法についてお話しします。

日々会社経営していると、株主総会の決議をする時間的余裕がない、面倒だ、ということは多々あります。また、合併や重要な決議でなく、決算や役員の任期の更新など、いわゆるルーティン化している決議事項については、なおさら株主総会に時間をかけたくないというニーズは大きいといえます。そこで、株主総会そのものの決議を省略するという発想が生まれ、実際に省略可能な制度が会社法に定められています。
これを「書面決議」といいます。

「書面決議」を正確に定義づけると、議決権を行使することのできる株主全員が株主総会の目的である決議事項について書面又は電磁的記録によって同意することで、この事項について株主総会決議があったものとみなす手続のことをいいます。ここで「電磁的記録」という重々しい表現が出てきますが、メールのようなものをイメージしてください。
つまり、メールで賛否を表明することで、総会決議を行ったことになるのです。いちいち日程を調整して総会招集通知を送って皆で集まることと比べると遥かに楽であることが分かると思います。

次回は実務で便利な書面決議の手続きを見ていきます。


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