高瀬総合法律事務所

#27
2024,11,28

  
読んでいるだけでちょっと面白い法律

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去る11月22日は「いい夫婦の日」とのこと。
家庭裁判所の常連である筆者にはいろいろと思うところがありますが、今回は、法律業界で悪い意味で有名な、通称「青い鳥判決」(名古屋地裁岡崎支部平成3年9月20日)をご紹介します。

この事件は、結婚生活約30年の夫婦のいわゆる熟年離婚の裁判で、妻が離婚を求めた理由は主に夫の暴言・暴力でした。裁判官は、夫の暴言・暴力をおおよそ認めたにもかかわらず、あまりにもポエミーな理由で妻からの離婚請求を斥け、それゆえにこの判決は悪名を得ています。
一番有名なフレーズは、「原告(妻)と被告(夫)、殊に被告に対して最後の機会を与え、二人して何処を探しても見つからなかった青い鳥を身近に探すべく、じっくり腰を据えて真剣に気長に話し合うよう、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認め、本訴離婚の請求を棄却する次第である。」というくだりでしょうか。
妻側にしてみれば、こんなメルヘンな理由で離婚できないうえ、自分の離婚訴訟がムダに全国的に有名になるという二次被害まで被ったわけで、青い鳥など消し炭にしてくれると思ったことでしょう。

また、上記のフレーズのインパクトにかき消されがちなのですが、この判決文では、「テンニースという学者は、社会をゲマインシャフト(共同社会)とゲゼルシャフト(利益社会)とに分けている。」から始まる謎の論述がくどくど続くのも見どころです。
ここは、「ゲゼルシャフト的な生き方をゲマインシャフト的な家庭生活に持ち込んだ被告にその失敗があると見られるのであって、訴訟継続中、ひとかどの身代を真面目に作り上げた被告が法廷の片隅で一人孤独に淋しそうにことの成行きを見守って傍聴している姿は憐れでならない。」とか、「ゲマインシャフト的な生き方をゲゼルシャフト的な行動しか知らない被告に要求しようとした原告にも性急な面があると言わざるを得ない。」とか、読み手をゲなんとかシャフトの迷宮に誘い込んで困惑させるパートです。
この迷宮を抜けた後、唐突に「青い鳥」の喩えが現れるので、「ちょっと何言ってるのか分からないけど、そうか、青い鳥か…」となんとなく受け入れてしまう危険性がなくはないです。いや、ないんですけどね。

なお、本判決で引用されている「青い鳥」の元ネタの童話は「チルチルとミチル」として有名ですが、この童話では、最終的に青い鳥は窓から逃げます。
実際、この事件は、妻側が控訴して控訴審で和解により離婚となったそうです。めでたしめでたし。

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会社経営と株式
株式について最低限押さえて欲しいポイント
~株主総会が無効!?~

前回お話しした株主総会がなかったことになる事例の続きをお話しします。

3. 特別利害関係者の議決権行使による不当な決議(取消)

具体例:

  • 取締役が自己の利益のために議決権を行使する
  • ライバル会社が敵対的な買収提案を阻止するために議決権を行使する

ポイント:

  • 特定の個人やグループが自分たちの利益のために決議を左右することはできません。
  • 公平かつ中立的な意思決定が求められます。

4. 決議内容の法令違反(無効)

具体例:

  • 公序良俗に反する内容の決議
  • 株主平等原則に反するような決議
  • 欠格事由のある者を取締役に選任する決議

ポイント:

  • 法令違反の決議は無効であり、たとえ裁判で争われていなくても当然に効力を失います。
  • 法令遵守は経営者にとって必須の義務です。

株主総会は、経営陣と株主が意思疎通を図り、会社の将来を決定する重要な場です。法令や定款を遵守し、適正な手続きを行うことで、株主総会の決議の有効性を確保し、会社の健全な運営に努めましょう。
次回はこれらの株主総会取り消しや無効の場合についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。


●もっと詳しく「株主総会」のページはコチラから
●もっと詳しく「会社支配権紛争」のページはコチラから
●コラム:「株主総会はなぜするのか?株主総会をする理由。株主総会運営基礎編」はコチラから

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