高瀬総合法律事務所

#28
2024,12,26

  
読んでいるだけでちょっと面白い法律

クリスマスふたたび

この配信がされる頃には、もうクリスマスは過ぎ去り、世の中は一気に年末年始ムードでしょうか。
カナダ郵便労働組合のストライキにより、今年はサンタさんへの手紙が届かなかったようです。
基本的人権がファンタジーを踏み潰す光景は、大人の世界への入口ともいえますね。
昨年の12月号ではちょっとほっこりするクリスマスのお話をお届けしましたが、今年はそうでもありません。

クリスマスといえばケーキですが、少し前に話題になった「ケーキの切れない非行少年たち」という本があります。矯正教育の現場での知見をもとに、「ホールケーキを3等分する」方法を提示できないなど認知機能に問題を抱えた非行少年を描いた著作です。
筆者はこの本を読んでいないのですが、概要だけ見ていつも思うのです。ホールケーキを3等分するのは、地味に難しい行為ではないのか?と。
まず、何をもって「等分」とするかの定義が曖昧です。単純に円柱の上部底面の表面積のみの等分をいうのか、それとも、ホイップクリームやイチゴなどの分布を踏まえた重量的な等分も考慮すべきなのか。付随して、もし砂糖菓子のサンタさんや板チョコなどのちょっとした嬉しいアイテムがあったとき、その分配は「等分」にどう影響するのか。
道具の面では、ナイフしか用いてはいけないのか、それとも定規や分度器や計量器の使用が許されるのか。
切り方も、縦に輪切りにしても良いのか、或いは、みじん切りにして重量で3等分するという、あらゆる問題を一挙に解決してケーキを台無しにする手段を講じても良いのか。
一度このへんの条件設定を出題者にお尋ねしてみたいのですが、「弁護士=めんどくさい奴」という印象を植え付けかねないのでやめておきます。

ところで、筆者が学生だった頃の民法には、軽くホラーな規定がありました。
「親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる」というものです(現在は削除済み)。 何の説明もなく法文の中にぽつんと現れるこの不気味な言葉は、どことなく拷問部屋を想起させます。
このような「悪い子にはおしおきをする」という発想は、実はクリスマスの裏にも潜んでいます。
例えば、ドイツにおいては、サンタさんの従者とされる黒衣のKnecht Ruprecht(クネヒト・ループレヒト)、通称「ブラックサンタ」が存在します。良い子がサンタさんからプレゼントをもらえるのに対し、悪い子にはブラックサンタが寝室に動物の臓物をぶちまけるなどハードモードなおしおきを展開するそうです。狩猟民族版なまはげといったところでしょうか。

こんな話題で今年を締めくくるのは気が引けるところもございますが、皆様、今年も一年お疲れ様でございました。良いお年をお迎えください。

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会社経営と株式
株式について最低限押さえて欲しいポイント
~株主総会決議取消~

今回は株主総会決議取消しに絞ってもう少し詳しく見ていきたいと思います。
株主総会決議取消の訴えは、会社法の中で最もよく提起される訴訟と言われています。それは、下記のように、取消理由が多種多様に富んでいて、しかも、頻度も高いからです。
そして、どのような場合に株主総会決議が取り消されるのかというと、当然ですが、取り消してなかったことにしたい立場の人がいるからです。もっとはっきりと言えば、決議の内容に反対したい株主がいるからです。株主が多数、もしくは多数でなくとも少なくとも2人以上存在し、派閥が作られている場合は、株主総会の取消が争われるケースが多いといえます。改めてそのような視点で取消理由を見てみましょう。

1.招集手続が法令・定款に違反、または著しく不公正

  • 一部株主に対する招集通知もれがあった
  • 取締役会決議を経ずに代表取締役が招集した
  • 招集通知に会議の目的が記載されていなかった
  • 招集の通知期間が不足していた
  • 取締役会設置会社において、口頭での招集通知した

2.決議方法が法令に違反

  • 決議の定足数を欠いていた
  • 取締役会設置会社で招集通知に記載のない事項を決議した
  • 株主でない者が決議に参加したり正当な代理人の議決権行使を拒否した
  • 説明義務に違反し、株主の質問に対して不十分な説明のみを行って決議した

3.決議の手続・方法が著しく不公正

  • 取締役が、自己の責任追及を免れるため、株主の出席を妨害する目的で、招集が困難な総会日時・場所を定めた

4.決議内容が定款に違反

  • 定款に定められた制限の員数以上の取締役を選任した

5.特別利害関係人が決議に参加

  • 「特別利害関係を有する者」とは「当該決議の成立によって、他の株主と相いれない利益を得、または義務を免れる者」と定義されています。分かり易くいえば、決議の成立によって、自分だけ得をする者のことです。

これまで様々な裁判で争われた例をピックアップしてみました。
しかし、これらが全て取り消されるわけではありません。
次回はその理由と株主総会取消の手続きについてみていきたいと思います。


●もっと詳しく「株主総会」のページはコチラから
●もっと詳しく「定時株主総会と臨時株主総会の違い」はコチラから
●もっと詳しく「企業法務コラム - 臨時株主総会の招集要件についての完全ガイド」はコチラから
●コラム:「株主総会はなぜするのか?株主総会をする理由。株主総会運営基礎編」はコチラから

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