絶対必要!中小企業経営者の遺言書2
2024年3月5日
中小企業経営は遺言書があれば本当に安心なのでしょうか。
実は事業承継対策は遺言書を書く前から始まっています。
経営者が遺言書を作成しても、全ての事業承継上の問題が解決されるわけではありません。特に、遺留分の問題は重要です。
遺留分とは、法定相続人が相続において最低限受け取るべき財産の割合のことを指します。遺留分の保護対象となるのは、主に配偶者、子ども、親などの直系血族です。遺言によってこれらの法定相続人の取り分が遺留分を下回る場合、法定相続人は遺留分侵害額請求権を行使して、不足分を請求することができます。
具体例
例えば、中小企業の経営者であるAさんが亡くなったとします。Aさんには配偶者と2人の子どもがおり、会社の株式を含む財産を残しました。Aさんは遺言書で、長男に会社の株式を全て相続させ、他の財産は配偶者と次男で分けると記載しました。
この場合、配偶者と次男は法定相続分に基づいて一定の割合で株式を含む財産を相続する権利があります。しかし、遺言書によって株式が長男に全て相続されると、配偶者と次男の遺留分が侵害される可能性があります。遺留分の割合は、配偶者と子どもそれぞれが法定相続分の半分を保証されています。
仮に経営者Aさんの遺した財産の総額が株式を含む1億円で、法定相続分による配偶者と子どもそれぞれの取り分が1/2(配偶者)、1/4(各子ども)だとすると、配偶者の遺留分は1億円の1/4(2500万円)、子どもの遺留分はそれぞれ1億円の1/8(1250万円)となります。事業承継者長男が全株を取得した時、遺言による分配がこれらの額を下回る場合、配偶者や次男は遺留分侵害額請求権を行使して不足分を請求することができるのです。
このような問題を回避し、よりスムーズな事業承継を実現するために、経営者は以下のような生前対策を検討すると良いでしょう。
1.生前贈与を活用する
生前に株式などの財産を事業承継者に贈与することで、相続時の財産を減らし、遺留分侵害のリスクを低減できます。もっとも、生前贈与のタイミングで遺留分減殺請求の対象になることも珍しくありません。また、生前贈与には贈与税がかかる場合があるので、弁護士や税務の専門家と相談することが重要です。
2.家族信託を利用する
家族信託を設定し、経営者が信託契約に基づいて財産(例えば株式)を信託することで、財産の管理や承継をスムーズに行うことができます。ただ、信託財産は相続財産に含まれないといっても、1回目の承継では遺留分減殺請求の対象となる場合があるため、弁護士などの専門家と相談することが重要です。
3.小規模企業共済や経営者保険の活用
小規模企業共済や経営者保険に加入しておくことで、経営者が亡くなった場合に受け取れる給付金を事業承継資金として利用することができます。これにより、相続人に対する遺留分の支払い資金を確保することができます。
4.相続人との事前の話し合い
事業承継計画について相続人全員と事前に話し合い、合意を形成しておくことも重要です。法的な拘束力はありませんが、合意内容を書面に残しておくことで、将来的な紛争を事実上防ぐことができる場合があります。
5.遺言書の作成
最終的に遺言書を作成する際には、遺留分の問題を踏まえた上で、財産の分配方法を慎重に検討し、遺言書に明記します。遺言書作成に際しては、法律の専門家のアドバイスを受けることが望ましいです。
事業承継は遺言書を書くことだけではなく、生前の対策も含めた総合的なプランニングが必要です。これにより、事業のスムーズな承継と、家族や従業員の将来の安定を確保することができます。
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