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【解決事例】借主が死亡し相続人全員が相続放棄した物件で、残置物を撤去し明け渡しを実現した事例

【解決事例】借主が死亡し相続人全員が相続放棄した物件で、残置物を撤去し明け渡しを実現した事例

2026年8月26日

問題の経緯・相談内容

借主が亡くなり、大量の荷物だけが残されてしまった

相談者は、借地上に所有している建物を第三者に貸していました。

ところが、その建物を借りていた方が亡くなり、室内には家財道具などの荷物がそのまま残されてしまいました。

建物自体も古く、相談者としては残置物を撤去したうえで建物を取り壊し、最終的には借りている土地を地主へ返したいという希望がありました。

しかし、借主が亡くなったからといって、オーナーが勝手に室内の荷物を処分できるわけではありません。亡くなった方の財産は原則として相続の対象となるため、相続人との関係を整理する必要がありました。

相続人が多く、個別交渉では解決まで時間がかかる状況

亡くなった借主には複数の相続人がいましたが、親族関係が遠く、一人ひとりに連絡を取り、残置物の撤去について同意を得ていく方法では、解決まで相当な時間がかかることが予想されました。

相談者には「できるだけ早く解決したい」という希望もあったため、弁護士は当初から裁判手続を利用して問題を整理する方針を取りました。

その後、相続人は全員が相続放棄をしたため、残された財産を管理する人がいなくなりました。そこで、相続財産清算人を選任してもらい、残置物や預貯金などを含めた相続財産を適切に処理する方向へと進めました。

クライアントの希望・争点

クライアントの希望

  • ✅亡くなった借主が残した家財道具などの残置物を、適法な手続で撤去したい。
  • ✅残置物を撤去して建物を取り壊せる状態にし、最終的に借地を地主へ返還したい。
  • ✅残置物の撤去などにかかる費用について、できる限り自身の持ち出しを抑えて解決したい。

本件の難しさ

  • ✅借主がすでに亡くなっているため、本人に残置物の撤去や建物の明け渡しを求めることができない。
  • ✅相続人が複数存在しており、誰を相手に手続を進めるべきか整理する必要があった。
  • ✅最終的に相続人全員が相続放棄したため、残された財産を管理・処分する人がいなくなった。
  • ✅建物内には大量の残置物があり、撤去に高額な費用がかかる可能性があった。

この問題の結果

相続財産清算人を選任し、残置物の撤去・明け渡しを実現

相続人全員が相続放棄したため、弁護士は裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てました。その結果、選任された清算人によって大量の残置物が撤去され、建物の明け渡しを実現しました。これにより、相談者が希望していた建物を取り壊せる状態まで問題を解決することができました。

残された預貯金を活用し、相談者の費用負担も軽減

借主宛ての郵便物から、保険の解約金による預貯金が残されている可能性が判明しました。弁護士がその事情を裁判所に説明したことで、相談者が予納金を立て替えることなく手続を進めることができました。

相談から最終的な解決までは、約1年4か月でした。

弁護士解説・ポイント解説

ポイント①:借主が亡くなっても、オーナーが勝手に荷物を処分することはできません

賃貸物件の借主が亡くなった場合、「本人がいないのだから、残された荷物を処分して部屋を空けてもよい」と考えてしまうかもしれません。

しかし、亡くなった方が所有していた家財道具なども相続財産となり得ます。そのため、原則として相続人との関係を整理したうえで、適切な手続によって明け渡しを進める必要があります。

特に本件のように相続人が多い場合、一人ひとりと連絡を取りながら解決しようとすると、長期間を要することがあります。今回は相談者が早期解決を希望していたこともあり、裁判手続を利用して問題を整理しました。

ポイント②:相続人全員が相続放棄した場合は「相続財産清算人」という方法も

本件では、訴訟提起後、最終的に相続人全員が相続放棄をしました。

相続人がいなくなっても、亡くなった方の預貯金や家財道具、債務などが自動的になくなるわけではありません。そこで利用したのが、裁判所に「相続財産清算人」を選任してもらう手続です。

相続財産清算人が選任されれば、相続人に代わって残された財産を管理・清算していくことができます。本件では、最終的に清算人によって建物内の残置物が撤去され、建物の明け渡しにつなげることができました。

ポイント③:郵便物から預貯金の存在を把握できたことが解決の大きなポイントに

今回の解決で非常に重要だったのが、亡くなった借主に一定の財産が残されていることを把握できた点です。

借主宛てに届いていた郵便物の中に、保険の解約金が入金されたことを知らせるものがあり、そこから一定額の預貯金が存在する可能性が判明しました。

相続財産清算人を選任する際には、清算人の報酬などに充てるため、申立人に予納金の納付を求められることがあります。本件では、預貯金が残されていることを裁判所へ丁寧に説明し、相談者による予納金の立て替えをせずに手続を進めることができました。

残置物の量が多ければ、撤去費用だけでも大きな負担になります。亡くなった借主にどのような財産が残されているのかを確認し、それを適切な手続につなげられるかどうかは、オーナーの負担を左右する重要なポイントです。

まとめ

借主死亡後の明け渡しは、通常の賃貸トラブルとは異なる難しさがあります

借主が亡くなったケースでは、単に「家賃が支払われない」「退去してもらえない」という問題だけではありません。相続人の調査、相続放棄の有無、残置物の権利関係、相続財産の有無など、相続に関する問題も同時に整理する必要があります。

また、今回のように亡くなった方に財産が残されていれば、その財産を利用して解決できる可能性がありますが、財産がほとんどない場合には、残置物の撤去費用などをオーナー側が負担せざるを得ないケースもあります。

「借主が亡くなり、荷物が残されたままになっている」「相続人が誰なのか分からない」「相続人全員が相続放棄してしまった」といった場合には、オーナーだけで判断して荷物を処分するのではなく、早い段階で弁護士に相談し、適切な手続を検討することが重要です。

このコラムを書いた人

三枝由佳

三枝由佳

略歴

  • 私立湘南工科大学付属高等学校 卒業 明治大学 法学部 入学
  • 中央大学法科大学院 卒業
  • 平成26年12月 弁護士登録,群馬県内の法律事務所にて勤務
  • 平成30年12月 弁護士法人高瀬総合法律事務所に入所