
売掛金回収に弁護士を使うべき?メリットと使わない方がよいケースを徹底解説
2025年11月19日
取引先が支払いをしない。請求書を送っても音沙汰がない。
このような「売掛金未回収」の状況に直面したとき、放置すれば資金繰りの悪化や倒産リスクにもつながります。
弁護士に依頼すれば、法的な手段を用いて回収を進めることができますが、費用がかかるため「本当に頼むべきか」と迷う方も多いでしょう。
ここでは、弁護士に依頼するメリットと、弁護士を使わない方がよいケースをわかりやすく解説します。
弁護士に依頼するメリット

メリット1.内容証明で「法的手段を取る構え」を明確にできる
弁護士が作成した内容証明郵便は、単なる請求書とは異なり、「法的措置を取る意思がある」という強いメッセージを相手に伝えます。
相手が支払いを軽視していた場合でも、弁護士名で届くことで支払いに応じるケースが少なくありません。
メリット2.裁判所を通じた強制的な回収手続きが可能
弁護士に依頼すれば、支払督促・少額訴訟・民事訴訟など、裁判所を通じた法的手続きを取ることができます。
特に、相手が支払う意思を見せずに時間だけが過ぎていくような場合には、これらの手続きによって確実な回収を図ることが可能です。
メリット3.弁護士名での交渉により支払いがスムーズになる
「弁護士が介入した」というだけで、相手が態度を変えるケースもあります。
支払いを引き延ばしていた相手でも、法的リスクを恐れて早期に支払うことが期待できます。
メリット4.弁護士費用を相手に請求できる場合も
契約内容や損害の性質によっては、弁護士費用を損害賠償の一部として請求できる場合があります。
全額ではないにせよ、費用の一部が回収できる可能性もあるため、弁護士に相談する価値は十分にあります。
弁護士を使わない方がよいケース

1. 相手が明らかに資金力がなく倒産寸前の場合
いくら判決で勝っても、相手にお金がなければ実際には回収できません。
このような場合は、弁護士費用の方が高くつく「コスト倒れ」になるリスクがあるため、慎重な判断が必要です。
◆TIPS1.相手の支払い能力はどうやって見極める?
- ・信用調査会社(帝国データバンク・東京商工リサーチなど)
法人なら企業信用情報を取得して、支払い遅延・倒産情報を確認できます。 - ・登記簿謄本の確認
本店所在地や代表者、設立年数などから、実態の有無を調べられます。 - ・取引銀行・他社経由の情報
共通の取引先や銀行担当者から支払い遅延の噂が出ていないかを探るのも有効です。 - ・弁護士による財産調査
弁護士は法的に許される範囲で、相手の財産や口座を調べる「財産調査」を行うことができます。
この結果をもとに、回収可能性があるかどうかを具体的に判断できます。
◆TIPS2.相手に資金力がなくても回収を諦めたくない
相手が支払わない、資金が少ない場合でも、以下のような手段があります。
- 分割払い・和解交渉
弁護士が間に入り、現実的な分割案を提案して和解に持ち込む。
相手も「一括は無理でも分割なら…」と応じやすくなります。 - 支払督促・強制執行
判決を得た後、銀行口座や売掛金、動産を差し押さえることで強制的に回収することも可能です。 - 保証人・取引先ルートからの回収
契約時に連帯保証人をつけている場合や、グループ企業が支払いに関与している場合は、そこからの回収を検討します。
2. 回収額がごく少額の場合
請求額が1万円〜数万円などの少額である場合、弁護士費用や裁判費用の方が上回ることがあります。
このような場合は、内容証明の送付や簡易裁判所での少額訴訟など、費用を抑えた手段を検討する方が現実的です。
まとめと行動のポイント
行動ポイント1「請求書 → 催促 → 内容証明 → 弁護士依頼」の順で、段階的に対応を

売掛金回収は、いきなり法的手段に踏み切るのではなく、段階的に対応することが基本です。
- 請求書の送付:支払期日を明記し、記録が残る形(メール・郵送)で送付。
- 電話・メールによる催促:支払い忘れや事務ミスの可能性をまず確認。
- 内容証明郵便の送付:法的措置を取る意思を示し、誠実な対応を促す。
- 弁護士への依頼:交渉・訴訟・強制執行など、法的手段で回収を図る。
このステップを踏むことで、相手に「段階を経て対応している」という明確な意思を示しつつ、
自社の対応の正当性も証拠として残すことができます。
行動ポイント2 回収の見込みと費用対効果を冷静に判断する

売掛金回収は「やるか・やらないか」ではなく、どの手段が最も費用対効果が高いかを判断することが大切です。
- 1.相手に資産・売上・取引実態があるなら、弁護士依頼による回収が有効
- 2.相手がすでに倒産・休眠状態なら、費用をかけても回収できない可能性が高い
- 3.金額が少額なら、少額訴訟や和解案など、低コスト手段を検討
弁護士は「費用をかける価値があるかどうか」を含めて、最適な手段をアドバイスしてくれます。
迷った時点で一度相談することで、「いつ」「どの手段で」「どこまでやるか」を明確にできます。
売掛金回収は、放置するほど回収率が下がる問題です。
「まだ大丈夫」と思っているうちに、相手が資金を移動したり、倒産してしまうケースも少なくありません。
だからこそ、売掛金回収では「どのタイミングで弁護士を使うか」が鍵になります。
相手が支払う意思を見せない、連絡が取れない、請求額が大きい。
そんなときは早めに弁護士へ相談するのが最善策です。
一方で、相手に資金力がない場合や少額請求の場合は、コストとのバランスを見て冷静に判断することも大切です。
弁護士に相談すれば、回収可能性や最適な手段について、法的視点から具体的なアドバイスを受けられます。
「迷ったらまず相談」。
その小さな一歩が、資金を守る大きな結果につながります。

