
離婚した親の再婚相手から「相続放棄」を求められたときにどう対応すべきか
2025年12月4日
相続の場面では、思いがけないトラブルに直面することがあります。たとえば、離婚した親の再婚相手から「相続放棄をしてほしい」と求められるケースがありますが、あなたならどうしますか?
法律上、相続放棄は本人の自由意思に基づくものであり、第三者から強制されるものではありません。
しかし実際には、家族関係や財産の状況を背景に、強い要請を受けて戸惑われる方も少なくありません。本コラムでは、弁護士の立場から「相続放棄を求められたときにどう対応すべきか」「放棄を検討せざるを得ない事情はあるのか」「無償で放棄すべきなのか」といった疑問に分かりやすく解説いたします。
1. 相続放棄は強制されるものではない

相続放棄は、相続人が家庭裁判所に申述して行う手続きであり、本人の自由意思に基づくものです。
たとえ離婚した親の再婚相手が「相続放棄してほしい」と求めてきても、それに従う義務はありません。
再婚相手はあなたにとって血縁上の法定相続人ではなく、あなたの相続権を左右する立場にはありません。したがって「放棄してほしい」という要請は単なる希望に過ぎず、強制力はないのです。
2. 放棄を検討せざるを得ないケースはあるか
法律上「必ず放棄しなければならない」事情は存在しません。
ただし、次のような現実的事情で放棄を選ぶ方もいます。
- ✅被相続人に多額の借金がある場合
- ✅不動産などの遺産を再婚相手が居住しており、権利を主張すると大きな摩擦が起きる場合
- ✅遺産が管理困難で、維持費・手間を避けたい場合
それでも放棄は義務ではなく、選択肢のひとつに過ぎません。
3. 「タダで放棄する」必要はない

例えば相続財産が不動産(自宅)で、不動産鑑定評価が5,000万円だったとします。
相続人が再婚相手(配偶者)とあなた(子)の二人なら、法定相続分はそれぞれ 1/2。あなたの持分は 2,500万円相当です。
再婚相手が「自宅を全部取得したい」と考えるなら、2,500万円を代償金として支払うのが妥当です。
実務では、不動産の売却可能性や居住状況を踏まえて金額が調整されることもありますが、「無償で放棄する」必要はありません。
4. 相続放棄せずに意思を示すには
相続放棄を求められても応じないと決めているなら、はっきりと拒否する意思を伝えることが大切です。
簡潔な伝え方(口頭・メール)
「相続放棄は本人の自由意思で行うものですが、私は放棄する意思はありません。相続人として法律に従い対応いたします。」
公式に伝えたい場合(内容証明郵便)
貴殿から相続放棄の要請を受けましたが、私は放棄の意思は一切ありません。
相続は法律に従い適正に処理するつもりですので、今後その点については繰り返しの要請を控えていただきたく存じます。
相手が弁護士を立ててきても、こちらが必ず弁護士を立てなければならないわけではありません。
ただし、強い圧力を感じたり、代償金の交渉が必要な場合には、弁護士に依頼するのも有効です。
5. まとめ
- ✅相続放棄は相続人本人の自由意思であり、再婚相手やその弁護士に強制されるものではない
- ✅放棄を選ぶ必要はないが、借金や家族関係の事情から放棄を検討する人もいる
- ✅不動産などで代償金が絡む場合、無償で放棄する必要はなく、法定相続分に応じた対価を請求できる
- ✅放棄しない意思を伝えるときは、簡潔に「相続放棄はしない」と明確に表現する

