【弁護士解説】フリーランス新法制定!注意点と適用対象外の例は?下請法との違いとは?
2024年12月4日
2024年11月1日に新たにフリーランス・事業者間取引適正化等法が施行されました。
本コラムでは、フリーランス新法の概要とフリーランス新法が対象としない例、昨今ニュースでも度々、取り沙汰されている下請法とフリーランス新法の違いについて弁護士目線で解説してきます。
フリーランス新法の概要と7つの義務
フリーランス新法は、主に業務委託契約を結ぶ個人事業主(フリーランス)が対象です。この法律は、契約の透明性を高め、不当な取引条件を防止することを目的としています。
フリーランス新法では、発注事業者がフリーランスに業務を委託する際、以下の義務が課されています。さらに発注者側がフリーランスに業務委託をしていることに加え、
- ・フリーランス以外に従業員を雇用しているか
- ・フリーランスに1カ月または6カ月など一定期間以上業務委託する場合
などの条件によって課される義務が変わってきます。
義務項目 | 具体的内容 | 適用条件 |
---|---|---|
取引条件の明示 | 業務内容、報酬額、支払期日、発注日などを直ちに書面または電磁的記録で明示する。 | すべての発注事業者 |
報酬支払期日の設定・支払 | 物品等の受領日から60日以内のできる限り早い日に支払期日を設定し、期日内に報酬を支払う。 | すべての発注事業者 |
禁止行為の遵守 | 受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しを行わない。 | 従業員を使用する発注事業者で、1か月以上の業務委託を行う場合 |
募集情報の的確表示 | フリーランスの募集に関する情報を広告等で掲載する際、虚偽表示や誤解を与える表示をせず、内容を正確かつ最新のものに保つ。 | すべての発注事業者 |
育児・介護等との両立配慮 | フリーランスからの申出に応じ、育児や介護と業務の両立が可能となるよう必要な配慮を行う。 | 従業員を使用する発注事業者で、6か月以上の業務委託を行う場合 |
ハラスメント対策の体制整備 | ハラスメント防止の方針の明確化・周知、相談体制の整備、迅速かつ適切な対応を行う。 | 従業員を使用する発注事業者 |
中途解除等の事前予告・理由開示 | 業務委託の中途解除や更新しない場合、原則30日前までに予告し、フリーランスからの理由開示請求に応じる。 | 従業員を使用する発注事業者で、6か月以上の業務委託を行う場合 |
フリーランス新法が適用されない個人事業主の例
フリーランス新法は広範囲に適用されますが、以下のケースでは適用対象外となる可能性があります。
- 法人化している場合
法人を設立している場合は新法の対象外です。 - 労働契約を結んでいる場合
雇用契約を結んでいる場合は労働基準法が適用されます。 - アシスタントや共同作業者を雇用している場合
事業規模が大きくなっている場合、個人事業主ではなく事業者とみなされる可能性があります。 - 趣味や副業としての活動
主な収入源ではなく、断続的な活動の場合は適用対象外となります。 - 一時的・単発的な業務
短期的なスポット業務は新法の適用外です。
フリーランス新法と下請法の主な違い
フリーランス新法と下請法は、いずれも取引における不当な条件を防ぐための法律ですが、対象や目的、適用場面が異なります。以下に具体的な違いを表にしました。
項目 | 下請法 | フリーランス新法 |
---|---|---|
保護対象者 | 法人・個人を含む下請事業者 | 個人事業主のフリーランス |
適用業種 | 製造、修理、などの特定サービス | 業種を問わない業務委託全般 |
目的 | 親事業者による不当行為の防止 | フリーランス取引の透明性確保と保護 |
適用される契約形態 | 親事業者と下請事業者の契約 | 業務委託契約全般 |
契約書の義務 | 書面交付が義務 | 契約書の交付が義務 |
契約トラブル時に弁護士に相談すべきケース
フリーランス新法の適用を受ける場合でも、トラブルが発生した際には弁護士への相談が有効です。特に以下のようなケースでは、早めの専門家の介入がトラブル解決の鍵となります。
- 契約書が交付されない場合
業務条件があいまいなまま進められている場合。 - 報酬が支払われない場合
支払い期日を過ぎても報酬が支払われない場合。 - 不当な条件変更が求められる場合
業務終了後に一方的な報酬減額を要求された場合。 - 適用範囲が不明な場合
自分が新法の対象者かどうかわからない場合。
まとめ
個人事業主などのフリーランスの方でも法人の場合でも
「口約束で進めてしまったために、言った言わないが起こり当初想定していた業務に遅れが出た」
「契約書がなくても納品(または発注)すれば問題なく進むと思っていた。こんな大事になるとは」
とご相談いただいる多くの方がそれまでの信頼関係をベースに受発注の判断したことにとても胸を痛めている印象です。
高瀬総合法律事務所は多くの契約トラブル案件を承っている契約書のプロ集団です。
少しでも今の契約やトラブルでお悩みがありましたらぜひご相談ください。