TOP企業関係ビジネスシーンで交わされる主な契約書4選とその注意点

業務委託契約書

ビジネスシーンで交わされる主な契約書4選とその注意点

2023年1月26日

前回のコラムではビジネスにおける契約書作成の重要性と、契約書を作成する際の注意点について解説させていただきました。本コラムでは、契約書の中でもビジネスシーンで最もよく締結される4つの契約についてより深く解説していきます。

業務委託契約

ビジネスシーンでも特に出番の多い契約のひとつです。「業務」の内容には特に縛りがなく、どのような業務でも良いため、外注する際に業務内容や条件の合意を取るために締結されます。 基本的には成果物の提出や制作物の完成によって取引が終了するものではなく、研究開発案件やコンサルティング、マーケティング、システム開発など、短期間で成果物を出すことが条件ではないような場合に用いられることが多いですが、成果によって報酬を支払う場合に業務委託契約を結ぶ場合もあります。 本来は成果物が完成しなくても報酬が発生する性質の契約であっても、契約書上で報酬の支払い条件が成果物の完成である事が明記されている場合には、成果物を提出しなければ報酬が発生しなかったり、逆に損害賠償請求をされるリスクがあるため、報酬体系と受託業務のマイルストーンとの関係を双方でしっかりと決めておく必要があります。 また、制作物等の完成が条件の場合は「完成」の定義も仕様書や要件定義書、その変更合意書をしっかりと作成しておかなければなりません。 さらに、業務委託の場合は特許や著作権、意匠権などの知的財産権が発生することも多いので、委託元と委託先のどちらにその権利が帰属するのか、帰属したとして、帰属しない他方当事者がその権利をどのように利用することができるのかをしっかりと定めておくことも重要です。

雇用契約

業務委託契約と似た契約に「雇用契約」があります。業務委託契約との違いは、労基法の適用対象となるかどうかという点です。その結果、雇用契約の場合は時給計算等により給与を支払わなければなりませんので、作業時間超過の場合は残業代を支払わなければなりません。他方、業務委託契約の場合で成果によって報酬を支払う仕組みにしていれば、作業時間超過により報酬増額とは原則なりませんが、作業場所が限定されていたり独立性が認められない場合は雇用関係とみなされ、受託者が仕事をしていた時間によって超過分の報酬を支払う義務が発生する場合もあります。 雇用契約を結ぶと、解雇という形で契約を解消することが原則できなくなり、成果に関係なく働いた時間に応じて給与を支払わなければならず、一旦上げた給与を下げられなくなります。契約の際には業務委託契約と雇用契約のどちらが事業に即しているかや、業務委託契約の場合は条件が業務委託の範疇であるのかをしっかりと確認するようにしましょう。

秘密保持契約

秘密保持契約は、自社の秘密情報を他社に開示する場合に、対象となる秘密情報を保持するために取扱いの範囲や方法を取り決めるために締結する契約です。主に個人情報や特許、企業秘密、ノウハウなどを取り扱う場合等に、情報の使用目的を明確にして秘密を保持するための方法や使用範囲、使用期間、返還方法などを定め、必要業務以外の場所では秘密を一切漏らさずに保持することを約束します。 秘密保持契約の重要なポイントは、秘密保持契約は必ず情報開示前に締結するということ。過去には特許やノウハウ、企業秘密等、取引を開示する前に安易に情報を開示してしまい、結局取引には至らずノウハウ等を盗まれてしまうケースなども発生しているので注意しましょう。

製造委託契約

他社に製造を委託する際に締結する契約です。製造委託はトラブルが非常に起こりやすいため、取引時の契約書作成はマストと言えるでしょう。製造委託契約に記載すべき内容については、製造数や単価、納期の他にも製造物に合わせて細かく条件を記載する必要があります。 実際に起こったトラブルを例に、契約書に記載しておいた方が良い項目をいくつか挙げてみましょう。

 
  1. ケース①

    製品を仕様書の通り作成し、納期通りに納品したが納品先でなかなか検収が終わらず、いつまで経っても代金を支払ってもらえない。

    トラブルを回避するには…

    納期だけでなく、「納品後何日以内に検収し、期限内に検収が終わらなかった場合でも支払う」といった条件を決める必要がある。

  2.   
  3. ケース②

    受託先は仕様書通りに作成したが仕上がりにムラがあり、注文者から再三にわたる変更、修正、改善要望がなされ、未払いトラブルが発生した。

    トラブルを回避するには…

    「仕様書通りに作成できたかどうか」の基準を契約書で定める必要がある。

ビジネスシーンでは他にも、請負契約や保証契約、ライセンス契約、共同研究開発契約など、取引や事業の内容に応じて様々な種類の契約が存在します。トラブルを回避するためには、契約書を作成する際にあらゆる場面を想定して双方で条件を決め、事前に合意を得ることです。これは契約書にサインをする側であっても同じこと。契約書にサインをする際にも、トラブル時に自社が損害を被る記載がないかしっかりと確認しましょう。ご自身、自社だけで漏れのない完璧な契約書が作成出来るか不安な場合はぜひ、法律のプロである私達にご相談ください。

このコラムを書いた人

高瀬芳明

高瀬芳明

略歴

  • 私立早稲田実業高校卒業、 東京大学 農学部卒業
  • 平成18年9月 司法研修所卒業・弁護士登録 横浜市内の法律事務所に入所し企業法務,不動産問題を主に取り扱う
  • 平成19年5月 破産管財人就任
  • 平成21年10月 相模原中央総合法律事務所設立
  • 平成25年6月 弁護士法人高瀬総合法律事務所設立