
遺言執行人って何をするの?遺言執行人がいなくなった時はどうしたらいい?
2026年4月7日
「遺言執行人」という言葉を耳にしたことはあっても、具体的に何をする人なのか、よくわからないという方は多いでしょう。
また、遺言書を作成した後に、指定していた遺言執行人が亡くなってしまったり、認知症になってしまったりした場合にはどうすればよいのか、不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。
本コラムでは、遺言執行人の役割と、いなくなった場合の対処法を弁護士目線でわかりやすく解説します。
1.遺言執行人とは何か

(1)遺言執行人の基本的な役割
遺言執行人とは、遺言者(遺言を書いた人)が亡くなった後に、遺言の内容を実現するために必要な手続きをすべて行う権限と義務を持つ人のことをいいます(民法第1007条以下)。
遺言書には「財産を誰に渡す」「〇〇を相続させる」といった内容が記載されていますが、それを実際に実行するには、様々な法的手続きが必要です。その手続きを担うのが遺言執行人です。
(2)遺言執行人の具体的な仕事内容
遺言執行人が行う主な業務は以下のとおりです。
- 相続財産の調査・目録作成
不動産、預貯金、株式など、遺産の全体像を把握し、財産目録を作成します。 - 不動産の相続登記の手続き
法務局への登記申請を行い、不動産の名義変更を実現します。 - 預貯金・有価証券の解約・名義変更
銀行や証券会社に対して解約や名義変更の手続きを行います。 - 遺産分割の実行
遺言の内容に従い、各相続人への財産の引き渡しを進めます。 - 相続人への通知と報告
相続人全員に遺言の内容を通知し、手続きの状況を報告します。 - 遺言の執行に必要なその他の手続き
認知や廃除など、遺言に記載された事項の実現も行います。
【弁護士からのワンポイント】
遺言執行人がいると、相続人全員の同意がなくても遺言内容を実行できるため、相続人間でトラブルが起きた場合でも手続きをスムーズに進めることができます。
(3)遺言執行人は誰でもなれるのか
遺言執行人になれるのは、以下の条件を満たす人です。
- ✅ 未成年者でないこと
- ✅ 破産者でないこと
逆に言えば、これらの欠格事由に該当しなければ、弁護士や司法書士などの専門家はもちろん、相続人や第三者も遺言執行人になることができます。
遺言書で指定する方法のほか、指定がない場合や指定された人が辞退・就職できない場合は、家庭裁判所が選任することもできます(民法第1010条)。
2.遺言執行人がいなくなった場合の問題とは

せっかく遺言書を作成して遺言執行人を指定していたとしても、遺言者よりも先に遺言執行人が亡くなったり、就任できなくなったりするケースがあります。このような場合、遺言の執行が滞り、相続手続きが宙に浮いてしまう危険性があります。
特に多いのが以下の3つのケースです。
ケース①:遺言執行人として指定していた人が亡くなった場合

■ どのような問題が起きるのか
遺言書で指定した遺言執行人が遺言者よりも先に死亡した場合、遺言執行人は不在の状態となります。遺言書に代わりの遺言執行人の指定がなければ、誰も遺言を執行する権限を持たない状態になってしまいます。
この場合、相続人の誰かが自主的に動こうとしても法律上の権限がなく、金融機関や法務局での手続きが難航することがあります。
■ 対処法
相続開始後に遺言執行人が不在であることが判明した場合、家庭裁判所に対して遺言執行人の選任を申し立てることができます(民法第1010条)。
- 申立人:相続人、受遺者、その他の利害関係人
- 申立先:被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
- 必要書類:申立書、遺言書の写し、相続人を証明する戸籍謄本など
家庭裁判所が適切な人物(弁護士など)を遺言執行人として選任することで、遺言の執行が再開されます。
なお、遺言書の作成段階で「補充遺言執行人」として予備の候補者を指定しておくことで、こうした事態を予防することができます。弁護士に相談して遺言書を作成する際にはこの点もあわせて検討することをお勧めします。
ケース②:遺言執行人として指定していた人が行方不明になった場合

■ どのような問題が起きるのか
指定された遺言執行人の所在がわからなくなった場合、その人に連絡を取ることができず、就任の同意を得ることができません。遺言執行人としての就任は任意であるため、本人の同意が確認できない限り、手続きを進めることが困難になります。
■ 対処法
行方不明の場合も、家庭裁判所への遺言執行人選任申立が有効な手段です。ただし、行方不明者が長期にわたって失踪している場合には、別途「失踪宣告」の手続き(民法第30条)も選択肢となります。
失踪宣告が認められると、その人は法律上「死亡したもの」とみなされ、指定された遺言執行人の資格が消滅したとして、あらためて家庭裁判所による遺言執行人の選任が可能になります。
いずれの手続きも専門的な法的知識が必要であり、弁護士に相談することで迅速かつ適切な対応が可能です。
ケース③:遺言執行人として指定していた人が認知症になった場合

■ どのような問題が起きるのか
民法上、遺言執行人の欠格事由には「認知症」は明記されていません。しかし、重度の認知症により判断能力が失われた状態では、実際上、遺言執行の任務を果たすことは不可能です。
金融機関や法務局への手続きでは、担当者として適切な判断を下す能力が求められます。遺言執行人に判断能力がなければ、手続きを受け付けてもらえない場合があります。
■ 対処法
認知症の場合は、以下の2つのアプローチが考えられます。
【方法1】家庭裁判所への遺言執行人解任申立
民法第1019条では、遺言執行人が任務を適切に行うことができない場合、家庭裁判所は利害関係人の申立により遺言執行人を解任できる旨が定められています。認知症による判断能力喪失はこれに該当すると考えられ、解任のうえ新たな遺言執行人を選任することが可能です。
【方法2】成年後見制度の活用
認知症の遺言執行人に後見人が選任されている場合、後見人が遺言執行人の代わりに手続きを行えるケースもあります。ただし、これは後見人の権限の範囲や遺言内容によって異なるため、専門家の判断が必要です。
認知症に関連するトラブルは、事前に遺言書の内容を見直し、万が一の場合の予備的な措置を講じておくことで防げることが多くあります。
3.そもそも遺言執行人を誰にすべきか

遺言執行人に誰を選ぶかは、遺言の実現にとって非常に重要です。実務上、よく見られる選択肢とその特徴は以下のとおりです。
| 遺言執行人の選択肢 | メリット | 注意点 |
| 相続人(配偶者・子など) | 費用がかからない場合が多い | 相続人間の利益が対立するとトラブルになりやすい |
| 信頼できる知人・友人 | 費用負担が少ない場合もある | 法的知識がなく手続きが困難になることも。高齢化による問題も |
| 弁護士(専門家) | 法的知識に基づき確実・迅速に手続きを進められる。中立的な立場でトラブル防止にも貢献 | 報酬が発生するが、複雑な相続には費用対効果が高い |
相続財産が複雑な場合や、相続人間でトラブルが予想される場合は、弁護士を遺言執行人に指定することで、後のリスクを大幅に軽減できます。
4.遺言執行人に関するよくあるご質問

Q. 遺言執行人は必ずいなければならないのですか?
A. 遺言執行人は必須ではありませんが、指定しておくことで手続きがスムーズになります。特に、認知症になった相続人がいる場合、相続人同士が不仲な場合、相続財産が多い・複雑な場合は、遺言執行人の指定を強くお勧めします。なお、遺言で「相続させる」とする場合(相続人への承継)は不動産登記において遺言執行人が必須ではありませんが、「遺贈する」とする場合(受遺者への移転)は遺言執行人が原則として必要です。
Q. 遺言執行人は辞任できますか?
A. はい、遺言執行人は正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て辞任することができます(民法第1019条第2項)。辞任後は家庭裁判所が新たな遺言執行人を選任することになります。
Q. 遺言執行人に報酬は支払わなければなりませんか?
A. 遺言書に報酬の定めがあればその額が、定めがない場合は家庭裁判所が定める相当額が支払われます(民法第1018条)。弁護士が遺言執行人となる場合は、あらかじめ報酬額を明示してご説明しますのでご安心ください。
遺言・相続に関するお悩みはお気軽にご相談ください
遺言執行人に関するご不安・ご疑問を抱えている方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。当事務所では、以下のようなご相談に対応しております。
- ・指定した遺言執行人が亡くなった/行方不明になった
- ・遺言執行人を誰にすればいいかわからない
- ・遺言書の作成から執行まで一括してサポートしてほしい
- ・相続人の間でトラブルが起きて困っている
- ・認知症の家族が遺言執行人になっていて手続きが進まない
初回相談は無料で承っております。お電話またはWebフォームよりお気軽にお問い合わせください。
※本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。具体的なご事情については、弁護士にご相談ください。
※民法の条文は令和5年時点の内容に基づいています。法改正等により内容が変わる場合があります。


