
仕事を発注したら途中で一方的に契約解除、さらに請求まできた!発注者が知るべき対処法
2026年4月15日
業者に仕事を発注して業務が進んでいたはずなのに、突然「契約を解除します」と通知が来た。しかも、まだ何も納品されていないにもかかわらず、費用の請求まで届いた——。そんな理不尽な状況に困惑している発注者の方は少なくありません。本コラムでは、業務の途中で業者から一方的に契約を解除され、さらに請求まで送られてきた場合の法的な考え方と対処法を、弁護士目線でわかりやすく解説します。
1.そもそも、業者は途中で一方的に契約を解除できるのか

(1)受注者が契約を解除できる場面は限られる
業務委託契約や請負契約において、受注者(業者側)が契約を一方的に解除できるのは、原則として発注者側に債務不履行(代金の不払いなど)がある場合に限られます(民法第541条・第542条)。
発注者が代金を支払っている、または支払う意思・能力があるにもかかわらず、業者が「やっぱりできない」「対応が難しい」などの理由で一方的に解除してきた場合、その解除は法律上無効となる可能性があります。
(2)業者側に「任意解除権」がある場合は?
民法第651条(委任の解除)では、委任契約はいつでも解除できると定められています。業務委託契約がこれに該当する場合、業者側にも任意解除権が認められることがあります。ただし、この場合でも「相手方に不利な時期に解除した場合」は損害賠償義務が生じます(民法第651条第2項)。
つまり、たとえ業者に解除権があったとしても、発注者が損害を被った場合は賠償を請求できる可能性があります。
(3)契約書の内容を確認する
まず契約書を確認し、以下の点をチェックしてください。
- ☑️ 解除に関する条項はどのように定められているか
- ☑️ 解除できる条件・理由の定めはあるか
- ☑️ 解除した場合の費用負担についての記載はあるか
- ☑️ 違約金・損害賠償に関する条項はあるか
2.納品前に解除された——費用を支払う義務はあるか

(1)原則:成果物がなければ報酬請求権は発生しない
請負契約では、原則として仕事の完成・納品が報酬請求の条件です(民法第632条)。業務が途中で終了し、成果物が納品されていない場合、業者が満額の報酬を請求する根拠は原則として認められません。
ただし、業務委託契約の性質によっては、完成した部分に相当する報酬が認められることもあります(民法第634条)。この場合でも、業者が自ら解除した事情が考慮されます。
(2)「途中までやった分の費用」を請求されたら
業者が「ここまで作業した分の費用は支払ってほしい」と主張してくるケースがあります。この請求が認められるかどうかは、以下の点によって異なります。
- ✅ 解除の原因がどちら側にあるか
(業者の一方的な都合か、発注者側に問題があったか) - ✅ 途中までの作業が発注者にとって実際に利益・価値をもたらすものか
- ✅ 契約書に中途解除時の費用負担について定めがあるか
業者が自らの都合で解除した場合、途中作業分の費用請求が認められないか、大幅に減額されるケースも多くあります。届いた請求書をそのまま支払う前に、必ず法的な検討を行うことが重要です。
(3)着手金・中間金を支払っている場合
すでに着手金や中間金を支払っている場合、業者が途中で解除したことにより、支払い済みの金額の一部または全部の返還を求めることができる場合があります。特に、業者側の都合による解除であれば、返還請求が認められやすくなります。
3.発注者が受けた損害——逆に請求できる可能性がある

(1)業者の一方的解除による損害賠償請求
業者が正当な理由なく途中で契約を解除した場合、それは業者側の債務不履行または不利な時期の解除にあたり、発注者は損害賠償を請求できる場合があります(民法第415条・第651条第2項)。
請求できる損害の例としては、以下のものが挙げられます。
- ・別の業者に改めて依頼するためにかかった費用
- ・業務の遅延・中断によって生じたビジネス上の損害
- ・急な解除対応のために要した人件費・諸経費
- ・この業者との契約のために断った他の取引の機会損失
- ・弁護士費用等の対応コスト
(2)相手の請求と自分の請求を「相殺」する
業者から費用の請求が来ている一方で、発注者側にも損害賠償請求権がある場合、両者を「相殺」することで、実質的な支払いをゼロまたは減額できる可能性があります(民法第505条)。相殺を行うには、弁護士による適切な通知が必要です。
4.具体的な対応ステップ
ステップ1:資料をすべて保存・整理する

契約書・発注書・仕様書・メール・チャットのやり取り・請求書・解除通知など、関連するすべての資料を保存してください。「いつ・何を・どのように合意したか」を証明できる記録が、後の交渉・法的手続きで重要な証拠になります。
ステップ2:請求書への支払いを保留し、内訳を確認する

届いた請求書はすぐに支払わず、まず請求の根拠と内訳の開示を書面(メールでも可)で求めましょう。支払期限が迫っている場合でも、「内容を確認中である」旨を相手方に通知することで一定の猶予を得られることがあります。
ステップ3:解除の無効または損害賠償の意思を相手に伝える

業者の解除が不当であると判断できる場合は、「解除を認めない」または「損害賠償を請求する」旨を内容証明郵便で通知することが有効です。口頭やメールだけでなく、内容証明郵便を使うことで法的な記録として残り、相手への抑止力にもなります。
ステップ4:早めに弁護士に相談する

解除の有効性、請求への対応、損害賠償の見込みなど、複数の法的論点が絡み合うトラブルは、専門家のサポートなしに対応するのは困難です。早い段階で弁護士に相談することで、有利な証拠の集め方や交渉の進め方について具体的なアドバイスを受けることができます。
5.よくあるご質問

Q. 契約書がない場合でも請求・交渉できますか?
A. 契約は口頭でも成立するため、契約書がなくても法的な主張は可能です。メール・チャット・見積書・議事録などが合意内容の証拠になります。記録を整理して弁護士に見せることで、対応方針を判断できます。
Q. 業者が「発注者側の指示が曖昧だったから解除した」と言っています。
A. 指示の曖昧さを理由にした解除が正当かどうかは、やり取りの経緯や契約内容によって異なります。業者が確認・質問をしてきたか、発注者が合理的な対応をしてきたかなどが判断材料になります。一方的な主張をそのまま受け入れる必要はありません。
Q. 相手がすでに弁護士を立てて請求してきています。
A. 相手方に弁護士がついている場合、こちらも早急に弁護士に依頼することを強くお勧めします。法律の知識がない状態で交渉を続けると、不利な条件を飲まされるリスクがあります。
Q. 時効はありますか?
A. 損害賠償請求権の消滅時効は、損害および加害者を知った時から原則5年です(民法第166条)。ただし、早めに動くほど証拠も集めやすく、交渉も有利に進みやすいため、気づいたらできるだけ早く相談することをお勧めします。
契約トラブルでお困りの方は、弁護士にご相談ください

以下のようなお悩みをお持ちの発注者の方は、お気軽に当事務所までご連絡ください。
- ✅ 業務の途中で業者から一方的に解除の通知が届いた
- ✅ 納品もされていないのに費用を請求されている
- ✅ 支払い済みの着手金・中間金を返してほしい
- ✅ 別業者への依頼でかかった追加費用を請求したい
- ✅ 相手が弁護士を立てて対応してきている
- ✅ 解除の理由に納得できず、契約の継続を求めたい
初回相談は無料で承っております。契約書・メール・請求書など、お手元にある資料をご持参いただくと、より具体的なアドバイスが可能です。お電話またはWebフォームよりお気軽にお問い合わせください。
※本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。具体的なご事情については、弁護士にご相談ください。
※本コラムの内容は公開時点の法令に基づいています。法改正等により内容が変わる場合があります。

