相模原市の弁護士事務所、高瀬総合法律事務所

TOP企業関係 > 共同研究開発契約

共同研究開発契約

共同研究開発契約の意義
今回から共同研究開発契約についてお話しします。

共同研究開発は,企業間,産学連携等,3者以上の企業体間など様々な形態をとりますが,

(1)研究開発のコスト軽減、リスク分散又は期間短縮、(2)異分野の事業者間での技術等の相互補完等、により研究開発活動を活発で効率的なものとし、技術革新を促進するもの(公正取引委員会HPより引用)であり、契約書チェックのご相談の中でも最近は目立って多く見受けられるようになりました。

共同研究開発と一口にいっても,双方の技術を持ち合いそれぞれが研究開発を行って統合するという原則的な形態から,一方が研究開発業務を行い,他方が費用の負担と開発成果の評価を行うというように研究開発業務が一方に偏在している(ある意味,研究開発委託に近い)形態まで様々です。




このように共同研究開発は近年その存在感と重要性を増してきているものの,実態が曖昧で複雑であることもあり,契約書の雛形は出回っていますが,留意すべき点は多岐にわたっており,その点を見落としたまま漫然と契約書にサインをすると後で思いもしない結果になる危険を孕んだ契約ともいえます。

したがって,共同研究開発契約についてはある程度長期に渡って一つ一つ丁寧に話していきたいと思いますのでよろしくお願いします。




共同研究開発契約において重要なポイントはいくつかありますが,簡単にまとめると

⑴契約前の段階について

⑵費用の負担について

⑶成果の扱いについて

⑷中止の要件について

⑸中止した場合の扱いについて

⑹契約後の取決めについて

となります。

これから話していくにあたって適宜追加していくかもしれません。

次回は「⑴契約前の段階について」からお話ししていきたいと思います。
共同研究開発契約締結前段階のポイント
今回から共同研究開発契約を締結する前の段階についてお話しします。

契約の締結前といっても,ご経験のある方であればご承知の通り,気を付けるべき点は数多くあります。

まず,第一に,互いが保有している秘密情報を漏洩しないという約束が必要です。

共同研究開発契約においては,すぐに契約を締結するのではなく,契約締結前に互いの技術情報や研究成果をある程度開示し合い,双方の製品,技術を評価してから,契約を締結するかどうか判断するプロセスを経ることがあります。

その際に,レターオブインテント(基本合意書)を締結して,秘密保持や成果の帰属等について取決めをすることもありますが,レターオブインテントを交わさなくても,秘密保持と成果の帰属については別途取決めをしておくべきです。

「仮に共同研究契約締結に至らなかった」場合について取決めをしていないと,契約締結前に秘密情報を開示するだけしてしまい,契約締結に至らないのに相手方企業に秘密情報を抜き取られる結果になってしまった,ということになりかねません。

したがって,共同研究開発契約前の秘密保持についての取決めは必須です。

秘密保持については,これまでかなりのスペースを割いてお話してきましたので,大部分は割愛し,共同研究開発契約との関係で特に気を付けるべき点についてのお話しします。

まず,情報開示の目的を適切に設定,限定することです。この目的によって,情報開示の範囲と目的外使用禁止の範囲に影響するためです。特に,他社との共同研究開発も並行して進めることを視野に入れる場合,この点についての検討はより重要となります。

つぎに,秘密情報の正確性・完全性についての表明保証は行わない方がよいです。共同研究開発初期段階では秘密情報は開発途上の段階にあるものも多く,不確実,不完全であるためです。

そして,共同研究開発契約締結前の段階の秘密保持契約については,通常のそれと比べて,知的財産についての取決めはしっかりと規定しておくことです。共同研究開発契約の締結を検討する段階で既に(締結前に),何らかの成果が創出されることがあり,このような成果が発明レベルに至ったにもかかわらず,契約の締結に至らなかった場合に,その発明の帰属や取り扱いについて規定しておく必要性が高いためです。




次回以降は「⑴契約前の段階について」のうち,レターオブインテントについてお話ししていきたいと思います。
レターオブインテントその1
今回はレター・オブ・インテントについてお話しします。
聞きなれない言葉かもしれませんし,実際に取り交わした経験はないかもしれませんが,本来であれば取り交わすに越したことはありませんし,レター・オブ・インテントという名称でなく「覚書」のような文書でも構いませんので,同様のことを行っておくと,共同研究開発に向けた交渉を安全かつスムーズに進めていくことが可能となります。

レター・オブ・インテントとは、共同研究開発契約の締結前に、双方が共同研究開発契約の締結に向けて交渉する意図があることを確認し,共同研究開発契約の基本的事項について暫定的に合意に至ったことなどを書面化したものです。

レター・オブ・インテントに記載する具体的内容の一般例としては,
・共同研究開発の締結に向けて誠実に交渉すること
・共同研究開発に関する共通理解・共通認識の確認
・交渉内容を互いに守秘すること
・交渉中は他の第三者と同一又は類似するテーマについて交渉を開始しないこと(独占性)
・レター・オブ・インテントの有効期間
のほか,
・共同研究開発における双方の役割分担
・共同研究開発までに発生した費用分担
・共同研究開発のスケジュール
等があります。
レターオブインテントその2
レター・オブ・インテントの法的拘束力,すなわち,レター・オブ・インテントで定めた内容が守られなかった場合に,裁判をして内容を守らせられるか,については,原則として,法的拘束力はない,と言われています。
しかし,あくまでも当事者間の約束ですので,当事者間で法的拘束力を持たせる,と規定すれば法的拘束力があるようにはできます。
一般的には,レター・オブ・インテントは法的拘束力がない文書として認知されていますので,全てについて法的拘束力を持たせるような規定の仕方はできないかもしれませんが,上記で特に重要な,独占性や費用分担などは法的拘束力を持たせるように規定したほうが良いかもしれません。
たとえば,共同研究開発契約の締結に向けて既に一方が開発する必要があり,開発に費用をかけてしまっていることもあります。にもかかわらず,契約の締結に至らなかった場合に,開発費用を全面的に負担するのは不公平だというケースは少なくありません。

このように,レター・オブ・インテントの重要性はご理解いただけたと思いますが,レター・オブ・インテントという名称を使わずとも,共同研究開発契約締結前の段階であっても取決めをしておかなければいけないことは数多くあることにご留意ください。

このコラムを書いた人

高瀬芳明

高瀬芳明

略歴

  • 私立早稲田実業高校卒業、 東京大学 農学部卒業
  • 平成18年9月 司法研修所卒業・弁護士登録 横浜市内の法律事務所に入所し企業法務,不動産問題を主に取り扱う
  • 平成19年5月 破産管財人就任
  • 平成21年10月 相模原中央総合法律事務所設立
  • 平成25年6月 弁護士法人高瀬総合法律事務所設立