【弁護士解説!2024年最新動向と対策】下請法と独占禁止法のリスクを回避
2024年8月7日
近年の公正取引委員会の勧告例から学ぶ
企業が下請法や独占禁止法のリスクを回避するためには、適切な法令遵守が欠かせません。ここでは、近年の公正取引委員会の勧告例を参考にしながら、企業が注意すべきポイントと具体的な対策について弁護士の視点から解説します。
公正取引委員会の勧告例
公正取引委員会は、下請法や独占禁止法の違反に対して厳しい姿勢を取っており、違反行為が発覚した企業に対して勧告を行っています。以下に、令和6年度の勧告例を具体的に紹介します。
勧告例1: 印刷会社による不当なデザインやり直し
A印刷会社は、食品製造業者等から製造を請け負う食品容器に貼付するラベルやパッケージのデザイン作成を下請事業者に委託していましたが、下請事業者が作成したデザインについて、受領後に問題がないとされたにもかかわらず、自社の顧客からの依頼に基づいて無償で24,600回のデザインやり直しを要求しました。これにより、下請事業者に対して984万円の費用相当額が不当に負担されました。この行為は、下請法第4条第2項第4号(不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止)に違反します。
この問題の対策
- 事前協議の徹底
デザインのやり直しを行う際は、事前に下請事業者と協議し、やり直しの回数や条件を明確にすることが重要です。 - 契約書の明記
契約書にデザインやり直しの条件を明記し、無償でのやり直しを避けるための条項を盛り込むこと。 - 代金支払いの透明性
やり直しが発生した場合、その費用を明確にし、適正な代金支払いを行うこと。
勧告例2: 食品会社による下請代金の不当な減額
B食品会社は、漬物製品の製造を下請事業者に委託していましたが、「物流協力金」「物流費」「特売条件」「割戻金」「サンプル使用分」および金融機関の振込手数料を実際の支払い額を超える額を下請代金から不当に減額していました。これにより、下請事業者に対して総額988万6497円が不当に減額されました。この行為は、下請法第4条第1項第3号(下請代金の減額の禁止)に違反します。
この問題の対策
- 正当な理由の明示
下請代金の減額を行う場合、その正当な理由を明示し、下請事業者の納得を得ること。 - 事前の合意
減額に関する事項は事前に契約書に明記し、双方の合意を得ること。 - 透明なコスト管理
物流費や協力金などのコスト項目について、透明なコスト管理と説明責任を果たすこと。
勧告例3: 小売業者による下請代金の不当な減額
C小売業者は、自社の店舗で販売する食料品等の製造を下請事業者に委託していましたが、「月次リベート」「システム利用料」「協賛金年契リベート」「達成割戻金」「支払通知作成料」を下請代金から不当に減額していました。これにより、下請事業者に対して総額2537万4079円が不当に減額されました。この行為は、下請法第4条第1項第3号(下請代金の減額の禁止)に違反します。
この問題の対策
- リベートや手数料の明確化
リベートや手数料の取り決めを契約書に明確に記載し、事後の一方的な減額を避けること。 - 合意に基づく変更
契約内容の変更が必要な場合は、下請事業者との協議を経て、双方の合意を得ること。 - 適正な減額方法
減額が必要な場合でも、適正な方法で行い、下請事業者に対する説明責任を果たすこと。
勧告例4: 大手自動車製造会社による不当な返品および金型の無償保管
大手自動車製造会社は、2022年4月から2023年10月にかけて、自社が取り扱う自動車部品の返品を下請事業者に対して無償で求めました。また、金型の無償保管を下請事業者に強要し、これにより、下請事業者に対して総額1,200万円の負担が強いられました。この行為は、下請法第4条第2項第5号(不当な返品の禁止)および第4条第2項第6号(不当な給付内容の変更及び不当な役務の提供の強要)に違反します。
この問題の対策
- 返品条件の明確化
返品が必要な場合、事前に契約書に返品条件を明確に記載し、無償での返品を避けること。 - 事前協議
返品を行う際は、事前に下請事業者と協議し、双方の納得を得ること。 - 適正な返品コスト
返品に伴うコストを明確にし、適正な支払いを行うこと。 - 金型保管の契約明確化
金型の保管についても契約書に明記し、無償での保管を強要しないこと。 - 定期的な契約見直し
金型保管や返品に関する契約内容を定期的に見直し、公正な取引条件を維持すること。
下請法・独占禁止法での弁護士の役割
企業が下請法や独占禁止法のリスクを回避するためには、弁護士のサポートが不可欠です。弁護士は、企業の取引慣行や契約書の内容をチェックし、適切なアドバイスを提供します。また、違反行為が発覚した場合には、迅速に対応策を講じるための助言を行います。過去の事例では親事業者と契約前にご相談いただいたことで下請法違反であることを指摘しリスクを回避することができたこともあります。
- 契約書のレビューと修正
- 法令遵守に関するコンサルティング
- 取引に関するトラブル発生時の対応
企業が法令遵守を徹底し、公正な取引を行うことは、長期的な信頼関係の構築に繋がります。弁護士と連携しながら、下請法や独占禁止法のリスクを回避するための対策を講じることが、企業の健全な発展に寄与します。
まとめ
下請法や独占禁止法に関する公正取引委員会の勧告例から学ぶことで、企業は法令遵守の重要性を再認識することができます。弁護士のサポートを受けながら、適切な対策を講じることで、リスクを回避し、公正な取引を維持することが可能です。企業が持続的な成長を遂げるためには、法令遵守と公正な取引の実践が欠かせません。