
弁護士から見る事業承継がうまくいかない理由と事前準備
2025年2月12日
事業承継がうまくいかない理由と、その解決策について、弁護士の視点から解説いたします。
事業承継は特に、中小企業の経営者にとって、避けて通れない課題です。適切な準備が不足していると、相続トラブルや経営の混乱を招く可能性があります。
これまでに相談いただいたケースに基づき、主な失敗の原因とその対策を弁護士が詳しく解説します。
1. 事業承継が失敗する主な理由

1.事前準備の不足
多くの中小企業では、経営者が事業承継の準備を後回しにしがちです。「まだ先のこと」と考え、具体的な計画を立てないまま時間が経過すると、突然の事態に対応できず、事業の継続が危ぶまれます。特に、結果として、後継者が決まらないまま経営者が突然引退・逝去し、事業が混乱する事態が発生し、最悪の場合、倒産の危機に瀕することも珍しくありません。
経営者の妻や子供などが急遽事業承継をして、経営を成功させたという話も耳にしたこともあるかもしれませんがとても稀なケースです。
ではどう事前準備すべきかは後述する「経営者が行うべき事業承継のための5つの事前準備」をご覧ください。
2.後継者の選定ミス
後継者の選定を誤ると、経営の安定性が損なわれ、従業員や取引先の信頼を失う可能性があります。親族内承継を前提とする場合、適性のない人物が後継者に選ばれたり、親族間で相続トラブルが発生したりすることがあります。特に、創業者が後継者を明確に指定しなかったため、家族間で後継者争いが勃発し、企業が分裂する事態となったケースも見られます。
3.契約書の不備
事業承継において、株式譲渡契約や経営権移行に関する契約書の整備は不可欠です。しかし、不適切な契約書や不備のある合意内容が原因で、後々紛争に発展するケースが見られます。特に、親族間や共同経営者間での契約が曖昧なまま進められると、トラブルの火種となり得ます。
事業承継の株式についての基礎参考記事
- 高瀬総合法律事務所NewsLetter vol.9 高瀬弁護士執筆「事業承継と株式 会社法の基本1」
- 高瀬総合法律事務所NewsLetter vol.10 高瀬弁護士執筆「事業承継と株式 会社法の基本2」
- 高瀬総合法律事務所NewsLetter vol.11 高瀬弁護士執筆「事業承継と株式 会社法の基本3」
4.不完全な相続対策
事業承継には相続が絡むため、適切な相続対策を行わなければ、相続税の負担が重くなり、事業運営が圧迫されることがあります。特に、自社株の評価額が高い場合、相続税の支払いが困難になり、経営資金を圧迫する可能性があります
参考記事:コラム:【会社経営者必見】相続の落とし穴5つと解決策
5.従業員・取引先とのコミュニケーション不足
事業承継は、経営者の交代だけでなく、従業員や取引先にも大きな影響を与えます。新しい経営者の方針が明確でない場合、従業員の離職や取引先との関係悪化につながることがあります。これにより、事業の継続性が損なわれるリスクが高まります。
2.経営者が行うべき事業承継のための5つの事前準備

- 後継者の選定と育成
早期に後継者を決定し、必要な知識・スキルを習得させるための教育計画を立てる。 - 事業承継計画の策定
5年〜10年のスパンで計画を立て、経営権の移譲プロセスを明確にする。 - 財務の整理
会社の財務状況を整理し、後継者が円滑に経営を引き継げるようにする。 - 相続・税務対策
相続税や贈与税の負担を軽減するための対策を弁護士・税理士とともに講じる。 - 利害関係者との調整
取引先や従業員との関係を維持し、新しい体制へのスムーズな移行を図る。
3. 事業承継を成功させるための弁護士の役割

弁護士は、事業承継成功のために、契約、相続対策、事業承継の計画、紛争防止策をとります。
1.契約書の作成・チェック
事業承継においては、株式譲渡契約や経営権移行のための契約書を適切に整備することが不可欠です。契約書は弁護士の専門領域です。弁護士が関与することで、法的リスクを回避し、円滑な承継を実現できます。また、事業承継計画を行う上で必要な多数の契約書の法律的なチェックも同時に行うことができますので安心です。
2.相続対策のアドバイス
相続税対策を考慮しながら、後継者が円滑に事業を引き継げるよう弁護士がサポートします。信託の活用や遺言書の作成など、具体的な対策を講じることが重要です。特に、遺留分対策や自社株式の評価対策など、専門的な知識が求められる分野での支援が可能です。
3.事業承継計画の策定支援
弁護士は、経営者とともに事業承継計画を策定し、後継者の育成や承継後のリスク管理をサポートします。これにより、事業承継のプロセスを円滑に進めることができます。また、税務、財務の専門家や、コンサルタント、金融機関などと連携をとって、ワンストップで事業承継問題に対応することも可能です。
4.紛争の防止と解決
親族間や共同経営者間でのトラブルを未然に防ぐため、契約や合意内容の明確化を図ります。また、万が一トラブルが発生した場合には、適切な法的手段を講じることで円満な解決を目指します。
事業承継は、慎重な計画と準備が求められるプロセスです。特に、契約書の不備や相続対策の欠如が原因で失敗するケースが多く見られます。弁護士のサポートを受けることで、法的リスクを回避しながら円滑な承継を実現することが可能です。
4. まとめ
「事業承継」にお悩みの方は、ぜひ専門家に相談し、計画的な準備を進めてください。